一石二鷹三枚舌

英語と中国語を同時に学ぶ! CCTV Growing up with Chinese英文書き取り1500分100本勝負

Introduction | Episodes |

Discussion

ひとつ気づいたことがあります。

英語は、名詞が「誰の物であるか」について極度に神経質な言語だということです。それこそ名詞の数が「ひとつかそれ以上か」についてと同じくらいに、です。

私はこれに気づいてから冠詞の抜けがはっきりと分かるようになりました。

俺の物は俺の物、そこらの物はだれかの物

端的にいうと「所有者+名詞」の形がすべてです。英語の名詞は必ず何らかの「所有者」に属し、この形となって現れます。

所有者は人間に限りません。なので人称代名詞の所有格(my, your, our, ...)だけではなく、冠詞(a, the)や指示代名詞(this, that, ...)、不定代名詞(some, any, another, ...)なども所有者になりえます。

もちろん複数形と不可算名詞の不定用法(applesとかwaterとか)は所有者にあたる単語が出てきませんが、限定用法になればやはり「所有者+名詞」の形になります(our applesとかthe waterとか)。逆にいうと単数形の可算名詞がいきなり出てくる(⇒所有者を言わない)ことはないのです。

以下はすべてCharlotte MacInnisの発言からの引用です。先頭の単語が所有者です。

  • an exchange student
  • the radical
  • your Chinese zodiac
  • our gang
  • its tone marker
  • their exams
  • some language points
  • any questions
  • every twelve years
  • today’s vocabulary list
  • China’s antique market
  • another episode of Growing up with Chinese

所有者はすべて文法的に同格であり、意味はどうあれ完全に交換可能です(単数/複数の違いを意識する必要はあり)。

  • another exchange student
  • your twelve years
  • today’s exams

不定冠詞aが所有者というのはイメージしづらいかもしれませんが、aは「誰のものでもない」(nothingやnoneのような存在)と考えると、「所有者+名詞」の型にぴったりと収まってくれます。

ちょうどマーク・ピーターセン著『日本人の英語』(岩波新書に興味深い記述があります(強調は引用者による)。

ネイティブ・スピーカーにとって,「名詞にaをつける」という表現は無意味である.

英語を話すとき——ものを書くときも,考えるときも——先行して意味的カテゴリーを決めるのは名詞ではなく,aの有無である.そのカテゴリーに適切な名詞が選ばれるのはその次である.もし「つける」で表現すれば,「aに名詞をつける」としかいいようがない

以前に読んだときはあまり実感できませんでしたが、今ならば「所有者+名詞」の特殊化だと分かります。

A my friendと言わないで

これらの代名詞や冠詞のうち、所有者に選ばれるのはひとつだけです。

かつてa my friendという言い方は誤りで、a friend of mineと言わなければならない、と聞いたことがあります。しかしなぜそうなのかという明確な説明をされたことはありませんでした。

Her my friendがおかしいのは日本人でも分かります。同様にa my friendも「誰のものでもない(a)」のと「私の(my)」が両立するのはおかしいから、だったわけです。

また、Charlotte MacInnisがよく最後にany questions you might haveと言っています。questionsの所有者はanyなので、any your questionsとは言えないわけです。any questionsと先に言い、[which] you might haveと限定的に補足した、と解釈できます。

これらより、ネイティブは名詞を言おうとするとき、まず「所有者」を明らかにして、後ろに名詞を連ねてゆく、という思考で話しているのではないでしょうか。

だからこそ、
“This is a pen.”と言われれば、「ああ(誰のものでもない、いわゆるひとつの)ペンね」となり、
“This is the pen.”ならば「ああ(我々のよく知る、例の)ペンね」、
“This is his pen.”なら「ああ(あなたのでも私のでもない、彼の)ペンね」となりますが、
This is pen.”とでも聞こうものなら、

Embed from Getty Images*1

誰のペンよ!?」と不安でたまらなくなるのでしょう。


書き起こしをしていて、どんなに小さくても、どんなに短くても、名詞の前にかすかにourと言っていることが後から分かる、ということが何度もありました(そしてそんなourをGoogleYouTube自動字幕起こしは聞き取っている!)。なぜ省略できないのか?なぜそうまでしてourと言わなければならないのか?と考えるうちにこの解釈に至りました。

この考察はとっくに知られた話かもしれません(追記:どうやら限定詞と言うらしいです)。ですが私は今回これで“her and her mother”みたいな冗長な表現の意義も(motherの所有者が必要だから)、固有名詞とtheが相容れない理由も(固有名詞が所有者になるから)、すべて納得することができました。いつか誰かの役に立つことを願って、ここに書き残しておきます。

*1:shrug 肩をすくめる